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2006年5月16日 (火)

怪しげな議論

「教育基本法の「見直し」に反論する」(永井憲一、暉峻淑子編、かもがわブックレット)を読んだところ、冒頭にこんな記述がありました。

「改定」論者はこう言います。まず一つは、憲法九条の改定がしたいと言うのです。「日本はこれまでODAなどで海外にたくさんの投資をしてきた。したがって投資した資産を維持、守っていかなければならない。また近年では、生産コストが安上がりとなる海外に日本の企業が競って工場進出をしている。これらを守っていかなければならない。そのためには専守防衛ではだめだ。日本の軍隊を海外に派遣できるような集団的自衛を可能とするような憲法九条の改正を早急に実現したい」と。

ODA「など」のなどが何を指すかはとりあえずおいておいて、ODAで投資した資産とは何を指すのでしょうか。

ODA(政府開発援助)で支援するのは、主に開発途上国の経済・社会インフラの整備や人材の育成です。具体的には、道路(高速道路から農道まで)や橋、かんがい施設、上下水道、学校、病院、およびそれらの設計・維持管理に従事する人々への研修などですが、これらは途上国に帰属する資産であり、それを守るために九条を改正したいという議論は聞いたことがありません。むしろ、軍事的手段を主体的に放棄しているからこそODAを重要な外交上の手段としている、という議論が一般的でしょう(例えばこちらの最初の文章)。

筆者はODAについてよくご存知ではなく、「改定」論者にダーティなイメージを与えるために世間一般にイメージのよくないODAを持ち出してきたように見えますが、だとすればODAにとって残念なことです。

ちなみに基本法関連では、「教育基本法「改正」-私たちは何を選択するのか-」(西原博史著、岩波ブックレット)も読みましたが、こちらの方が冷静な議論がされていて好感を持ちました。

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