« 途上国の人は怠惰か? | トップページ | 新規巻き返し »

2006年6月11日 (日)

種牡馬の長打率

日経新聞の野元記者のコラムにこんな一節がありました。

生産地では、一時期、影の薄かったオペラハウスが再び人気上昇中という。02年には種付け料230万円だったが、今は50万円に落ちている。結果を後追いする形で種牡馬の人気が上下するのは、実はかなり恥ずかしい話である。オペラハウスはサドラーズウェルズ系でスピード優先の日本競馬にはもとより不向き。ポテンシャルは高いので大物は出るが、「三振9回で本塁打1本」というイメージ。多くの生産者は巨額の負債を抱え、生産継続の可否という厳しい設問を突きつけられている。「種付け料が安い」と、偶発的に結果を出した打率の低い種牡馬に飛びついても、傷口を広げる人の方が多かろう。

三振9回で本塁打1本とはあんまりではなかろうかと思い、データ上ではどうなっているかを調べてみました。

いつものようにnetkeibaのデータベースを使い、これまで産駒の出走頭数が300頭を越える主だった種牡馬の勝ち馬率、出走頭数に占める獲得賞金1億円以上の馬の比率、同じく5000万円以上の馬の比率を出してみました。出走頭数が300頭を越える馬に限ったのは、出走頭数が少ない種牡馬は供用間もない種牡馬(スペシャルウイークやアグネスタキオンなど)の場合が多く、こうした種牡馬の産駒の獲得賞金はまだ少ないからです。なお、種付料はこちらの種付料価格表を参照させて頂きました。

まず勝ち馬率順に並べるとこんな感じです。

種牡馬名 勝馬率 1億円以上 5千万以上 種付料
サンデーサイレンス 65.3% 14.2% 27.3%
フォーティーナイナー 55.9% 4.9% 15.5% 450
アフリート 54.0% 3.5% 12.3% 270
ブライアンズタイム 51.8% 7.5% 17.6% 550
サクラバクシンオー 49.8% 2.7% 12.5% 400
ジェイドロバリー 48.7% 2.4% 10.2%
フジキセキ 44.0% 3.9% 10.4% 500
メジロライアン 39.0% 2.3% 7.0% 40
ティンバーカントリー 37.4% 2.5% 7.5% 120
ダンスインザダーク 35.4% 3.1% 7.7% 500
バブルガムフェロー 34.9% 1.8% 7.4% 150
トウカイテイオー 34.2% 2.9% 7.4% 50
コマンダーインチーフ 34.0% 3.0% 8.6% 250
ラムタラ 33.0% 1.9% 5.9% 30
サッカーボーイ 31.7% 3.5% 10.2% 40
オペラハウス 29.2% 5.0% 9.4% 50
フサイチコンコルド 29.2% 1.3% 4.9% 150
エリシオ 27.5% 0.6% 5.9%

これをみるとお世辞にも打率が高いとは言えないようです。エリシオにも迫る勢いとは予想外でした。

他方、1億円以上の獲得賞金がある馬の確率でみてみますと、こういうふうになります。

種牡馬名 勝馬率 1億円以上 5千万以上 種付料
サンデーサイレンス 65.3% 14.2% 27.3%
ブライアンズタイム 51.8% 7.5% 17.6% 550
オペラハウス 29.2% 5.0% 9.4% 50
フォーティナイナー 55.9% 4.9% 15.5% 450
フジキセキ 44.0% 3.9% 10.4% 500
サッカーボーイ 31.7% 3.5% 10.2% 40
アフリート 54.0% 3.5% 12.3% 270
ダンスインザダーク 35.4% 3.1% 7.7% 500
コマンダーインチーフ 34.0% 3.0% 8.6% 250
トウカイテイオー 34.2% 2.9% 7.4% 50
サクラバクシンオー 49.8% 2.7% 12.5% 400
ティンバーカントリー 37.4% 2.5% 7.5% 120
ジェイドロバリー 48.7% 2.4% 10.2%
メジロライアン 39.0% 2.3% 7.0% 40
ラムタラ 33.0% 1.9% 5.9% 30
バブルガムフェロー 34.9% 1.8% 7.4% 150
フサイチコンコルド 29.2% 1.3% 4.9% 150
エリシオ 27.5% 0.6% 5.9%

このように並べ替えてみると、サンデーサイレンス、ブライアンズタイムについで3位になります。三振9回でホームラン1本という表現が妥当かどうかわかりませんが、確かに長打力はあります。しかも、他の種牡馬との種付料を比較してみてください。

『「種付け料が安い」と、偶発的に結果を出した打率の低い種牡馬に飛びついても』と野元記者は書かれていますが、オペラハウス産駒の出走産駒は339頭、これだけの数が走っていての数字です。野元記者の書き方ではいかにも生産者が浅はかなように読めますが、価格と長打率を組み合わせて考えれば、決して非合理的な選択ではないのではないでしょうか。

あとは需要側のニーズ次第。とりあえず堅実に2頭に1頭は勝ちあがるがしかし高価なフォーティナイナーやアフリートの子どもを買うか、それとも20頭に1頭は1億円ホースが出る夢を追って安価なオペラハウスの子どもを買うか。それぞれにニーズがありそうなものですが・・・。

ちなみに5000万以上獲得賞金があった産駒の割合で並べ替えてみると以下の通りになります。

種牡馬名 勝馬率 1億円以上 5千万以上 種付料
サンデーサイレンス 65.3% 14.2% 27.3%
ブライアンズタイム 51.8% 7.5% 17.6% 550
フォーティナイナー 55.9% 4.9% 15.5% 450
サクラバクシンオー 49.8% 2.7% 12.5% 400
アフリート 54.0% 3.5% 12.3% 270
フジキセキ 44.0% 3.9% 10.4% 500
ジェイドロバリー 48.7% 2.4% 10.2%
サッカーボーイ 31.7% 3.5% 10.2% 40
オペラハウス 29.2% 5.0% 9.4% 50
コマンダーインチーフ 34.0% 3.0% 8.6% 250
ダンスインザダーク 35.4% 3.1% 7.7% 500
ティンバーカントリー 37.4% 2.5% 7.5% 120
バブルガムフェロー 34.9% 1.8% 7.4% 150
トウカイテイオー 34.2% 2.9% 7.4% 50
メジロライアン 39.0% 2.3% 7.0% 40
ラムタラ 33.0% 1.9% 5.9% 30
エリシオ 27.5% 0.6% 5.9%
フサイチコンコルド 29.2% 1.3% 4.9% 150

|

« 途上国の人は怠惰か? | トップページ | 新規巻き返し »

ラフィアン」カテゴリの記事

ユニオン」カテゴリの記事

コメント

入江さん

アジュディケーティングは地方のサンデーサイレンスと呼ばれているのでしたっけ。「当てに行く」のが長打にもなりえるいい種馬ですね。芝、ダート別の成績等も解析して種付け料との相関関係を分析したら面白いかなと思うのですが、今のところ技量が伴いません…。

オベリスクライトの復帰はまだ先でしょうか。通勤で毎日コンコルド広場を通るので、オベリスクをみてたまに思い出したりしています。いやあ本当に頑張って欲しいです。フサイチコンコルド産駒。

投稿: participant | 2006年6月15日 (木) 07時04分

このコメント・チェーンはフサイチコンコルド産駒友の会みたいになってきましたが、ウチの3歳もそろそろ乗りはじめている頃かなぁ。
アジュディケーティングなんですが、中央ではなく、思いっきり地方競馬での成績が偏っているんですね。だから売却を視野に入れると、やはりアジュディは地方で、自分で使い「当てにいく」感じなんです。
本当はここらで当歳で売れて、出費が一段落して欲しいんですが…。
手っ取り早く稼いでくれそうなのは、やはり復帰後のフサイチコンコルド産駒しかないので、声の限り応援しましょう。

投稿: 入江たのし | 2006年6月14日 (水) 21時22分

みんさん、こんにちは。
土曜日のスプートニクは残念でした。ただ、みんさんのレポート(ありがとうございます)、ユニオンのHPによれば敗因は明らかなようですので、安心しました。

広島のランス選手、覚えていますとも。私は阪神ファンですが、それでもランスのあの一発の魅力が好きでした。やはり長打力のある選手の打席はワクワクしていいです。
野球も競馬と同じで各種の統計が発達していて面白いですね。打者の場合、打率、本塁打、打点の3つが主要な数字で、一般に打率が上位の人が首位打者と呼ばれ重視されていますが、野球が相手よりも点を多く競技であることを考えれば、打点(及び得点)の高い選手をもっと重視してもいいように思います。

フサイチコンコルドについては、私も現3歳馬をもっているのでエクセルで並べ替えをしながら「トホホ」と思っていました(笑)。しかし出資をしてしまったものは仕方ないので、みんさん、お互いフサコン産駒を声の限り応援しましょう!

投稿: participant | 2006年6月12日 (月) 13時28分

入江さん、こんにちは。
すみません、アジュディケーティングについては最近のリーディングで上位に名前がなかったので端折ってしまったのですが、調べたところ勝馬率.375、AEI0.75、獲得賞金1億円以上の産駒の比率は2.2%、同じく5000万円以上9.7%でした。トウカイテイオーとの比較では、勝馬率と5000万円以上賞金を獲得している馬の比率ではアジュディケーティングの方が上回っていました。

取引価格がガラス張りであれば、というのは本当にそのとおりですね。私も需要ニーズについて「生産者にとって需要側の情報はどう伝わるのだろう?」と思いながら書いていました。確かに、個々の産駒の出来次第とはいえ、有意な平均売却価格があれば需要ニーズがある程度つかめ、将来の計画も立てやすくなるのではないかと思います。

出来・不出来のリスクは他の農産物の場合にもあるわけですが、他の農産物の場合はどうやってリスクを回避しているのか調べてみたいと思います。馬とジャガイモを比べるのは適切ではないかもしれませんが…。

投稿: participant | 2006年6月12日 (月) 13時18分

Participantさん、私のコメントについて訂正です。
安い種付け料とのバランスが取れているのは勝率でであって、「名馬出現確率」については全然取れてないですね。失礼しました。
当たればでかいという意味では「ランス選手」ですが、ランス選手をかなり安い年俸で雇える、ということですね!!
そういえば、昨年フサイチコンコルドの仔に出資しましたが、このデータをみてちょっと後悔しました。
打率が低くて長打もない(笑)

投稿: みん | 2006年6月11日 (日) 22時19分

アジュディケーディングにするかトウカイテイオーにするかでさんざん迷った揚げ句、トウカイテイオーをやめてちょっと失敗したかなと思う統計でした(苦笑)。獲得賞金ではなく、全ての馬の取引価格がガラス張りで、売却金額までクリアになれば、生産者ももっと冒険できるでしょうが、一部の人気種牡馬以外ではそこが不透明。野元記者もそのあたりのジレンマは百も承知と思いますが、まずは論点をそこまで広げなかったということだと思います。鶏が先か卵が先かですねぇ。

投稿: 入江たのし | 2006年6月11日 (日) 15時26分

Participantさん、こんにちは。
興味深い分析でした。
オペラハウスの種付け料は、その実績を考えれば随分安いものだと思ってていましたが、こうやってデータでみると「名馬出現確率」とのバランスは取れているのですね。とりわけ、かつて広島東洋カープにいたリチャード・ランス選手(1987年、最低打率、最多三振で本塁打王を獲得)のようなものでしょうか(ご存知ですか??古い?)
ただ、生産者にしてみれば、実績が無くて種付け料の安い種馬より、あの「オペラオー」や「サムソン」を出した「オペラハウスの仔」の方が売りやすいのは間違いないでしょう。責められぬことです。野元記者がちょっと辛口でしたね。

投稿: みん | 2006年6月11日 (日) 14時23分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 種牡馬の長打率:

« 途上国の人は怠惰か? | トップページ | 新規巻き返し »