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2007年4月29日 (日)

「使途不明」は国際標準

4月27日付の読売新聞で「02年度のODA、312億円が使途不明・・・供与額の99%」と題する記事がありました。

開発途上国に対し、日本の政府開発援助(ODA)として行われた「債務救済無償資金協力」で、2002年度に供与した20か国(総額約316億円)のうち19か国が使途報告書を提出しておらず、少なくとも総額約312億円が使途不明になっていることが、読売新聞が行った情報開示請求などでわかった。

312億円が使途不明、と聞くと「何をやってるんだ」という印象を受けますし、本件の場合、途上国政府との間で「報告書を提出する」約束をしていたわけですから、その報告書が提出されていないのは残念なことです。

他方において、「使途に関する報告」についてですが、国際的な潮流は、「援助は特定のプロジェクトを支援するのではなく、開発途上国の国庫に入れることにして、各ドナーは援助資金の使途について、ひとつひとつ報告を求めるのはやめよう」ということになっています。

これは、各ドナーがそれぞれの手続きで開発途上国に報告を求めると途上国の行政府の手続きが大変になり、本来業務が行えなくなる、という反省に基づいています。

たとえばある国で30のドナーがいて、それぞれ年間30件の事業をやっているとしましょう。その各事業で資金使途に関する報告書を提出させるとなると、単純計算で30×30で900件の報告をすることになります。

開発途上国の政府はただでさえ行政能力が脆弱なのに、年間900件もレポートを提出していては自国の行政という本来の仕事ができなくなります

その反省を元に、「個別に事業をやるのではなく、その国の財政に支援をすることにして、資金が適切に使われたかどうかは、適切な財政枠組みや計画に基づいて支出されたかどうかをみることにし、個別の資金使途については問わない」という方法がイギリスや北欧の国々によって推奨されており、特にサブサハラアフリカ諸国においては国際標準になりつつあります。(注)

こうした援助の形態を「一般財政支援」といいます。

実際に一般財政支援という形態の援助が、個々のプロジェクトを支援する形態の援助より貧困削減や経済成長に効果があるのかどうかは、今後評価を行う必要がありますが、今回、資金使途の報告がないことをマスコミや国会に叩かれたことで、日本政府が仕組み上資金使途がトレースできない一般財政支援に消極的になってしまうことが懸念されます。


(注)もっともイギリスや北欧でも資金使途がトレースできないことについてマスコミや議会からの批判はあるそうで、資金使途ではなく、援助によっていかに開発効果があがっているかを説明して理解を得る方策を探っているとのことです。

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コメント

コメントを頂きありがとうございます。限られた紙面では全ての背景を書き込めないという事情はあるのでしょうが、あまりに一方的だとその他の記事も鵜呑みにはできないなあと思ってしまいます。

なお、新聞における開発問題の取り上げ方については、日経新聞はパリ宣言採択時に記事にしていましたし、最近も経済学教室で小寺合同開発委員会事務局長の内容の濃い記事がありました。また、朝日新聞の「新戦略を求めて」も開発問題とODAの重要性を強調していて、全体的には希望が持てるのではないかと思っています。

長期的には物事の一面しかみない記事がこうした質の高い記事によって駆逐されていくことを期待したいところです。

投稿: participant | 2007年5月20日 (日) 11時19分

よくお分かりの方がいらっしゃるようで安心しました。新聞はこういうことをわざと書かないで、センセーショナルに取り上げる傾向がありますね。こういうブラックジャーナリズムに対抗する手段はないのでしょうか。悲しくなります。

投稿: | 2007年5月18日 (金) 15時41分

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