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2007年5月29日 (火)

現代の貧困

Hinkonちくま新書から出ている「現代の貧困」(岩田正美著、700円+税)を読みました。

ワーキングプアや貧困家庭の問題がアネクドート的に語られる記事はよく目にしますが、本書ではそうしたアネクドートは極力抑えられ、貧困の定義のあり方から統計の取り方、実際の統計データにもとづく分析がわかりやすく書かれています。

特に印象に残ったのは、

  • 戦後のある期間が過ぎてから日本では貧困問題は解決したものと考えられ、貧困に関する統計がとられなくなってしまったこと
  • 貧困は一過性であれば問題は少ないが、貧困から抜け出せないことが問題であること。
  • それを知るためには、異時点間で個人や家計の経済状態を調べるパネル調査が必要であること
  • 数少ないパネル調査の結果からは、貧困に結びつきやすい要素(子どもの数、離死別経験、学歴など)が浮かび上がってくること
  • 日本では社会保険と生活保障の間に落ち込んでいる人たち(勤労可能なワーキングプア等)への所得保障が弱いこと

などの点です。

なお、本書によれば、OECDが2005年に公表した国際比較で日本は、10等分された所得階層のうち下から3つの階層が再分配後に得た所得のシェアで、先進国19カ国中、下から2番目だそうです。

要するに国家の所得再配分機能が弱いということですが、貧困という「あってはならない状態」を是正し、安定した社会を創るためにはやはり国家の機能が重要である、という印象をもちました。

そして国家に再分配機能を信託する市民としては、どういう社会でありたいかを、本書で取り上げているような統計、データとその分析に基づいて考えることが重要なのだな、とも。

というわけで、ここ最近読んだ本のなかではかなりの良書でした。

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