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2008年1月 3日 (木)

エコノミック・ヒットマン

Economic_hitman 「エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ」(ジョン・パーキンス著、古草秀子訳、東洋経済新報社 1800円+税)を読みました。

東洋経済という名だたる出版社、原著はアメリカでベストセラーならば、と思って期待して読んでみましたが、正直なところ、人にお勧めできるような本ではありませんでした。

エコノミック・ヒットマンとは、

  • 開発途上国に発電所などの開発援助プロジェクトを売り込み、それを裏付ける経済データを作成することによって世界銀行やUSAIDなどの資金を呼び込み、それをアメリカ企業に受注させて資金をアメリカに還流させるとともに、
  • 途上国を世銀融資などにより借金漬けにして債権者(つまりアメリカ)のいいなりになるような状況に追い込み、軍事基地の設置や天然資源の獲得などにおいてアメリカの影響力を行使する

ような役目をおった工作員のことだそうです。

著者のパーキンス氏は、アメリカの国家安全保障局(NSA)にスカウトされ、美貌の女性教官から訓練を受けた後、インドネシア、サウジアラビア、パナマなどに派遣され、民間コンサルタントのチーフエコノミストとして楽観的な経済見通しの作成や開発計画の売り込みを行います。

私には著者の体験の真贋を見極めるすべはありませんが、本書を読む上の留意点は、著者がエコノミック・ヒットマンとして働いたという時期は1960年代から70年代にかけてで、いかにも時代が古いことです。

現在においては、上述のエコノミック・ヒットマンの「手口」は通用しないものと思われます。理由は以下のとおりです。

  • まず国際援助機関や政府関係機関の情報公開が進み、絵空事のような経済予測(年率17%の成長!)などは受け入れられる余地がないこと。
  • 援助のアンタイド化(ひもなし化)が進み、特定国企業への資金還流はできないこと。
  • 途上国の債務は結局先進国の財政コストによって削減されていること、またその結果、債務持続性分析は慎重に行われていること。
  • 開発援助の世界はアメリカ以外にも欧州諸国、日本といったプレーヤーがおり、アメリカ一国が勝手気ままなことができる世界ではないこと。

こうしたことは少しでも開発援助について知っている人ならすぐ思いつく点ですが、アマゾンの書評をみると好意的なものが多くて、結構驚きです。

この本を読んで「アメリカは国家的な意思として途上国を食い物にしている!」と思った人は、ぜひアメリカ政府(クリントン政権)の中枢にいて世銀のチーフエコノミストもやったスティグリッツの著作と読み比べることをお勧めいたします。

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