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2008年5月 1日 (木)

食糧価格の高騰について

世界的な食糧価格の高騰については、年初あたりからポツポツと聞こえていましたが、4月2日に世銀のぜーリック総裁が行った「現下の世界経済運営における政治的課題」と題するスピーチがなされて以降、連日のようにテレビ、新聞などで報道されるようになりました。

金融市場の混乱を受け、食品価格が高騰しています。2005年以来、主要食糧の価格は80%も上昇しました。先月、コメの実質価格は19年ぶりの高値となり、麦の実質価格に至っては28年ぶりの、過去25年間の平均価格の2倍に達しました。

これは一部の農民にとっては喜ばしいことかもしれませんが、最も弱い立場の人々には強烈な打撃となっています。わずか4~5歳の子供たちが安全な農村を離れて、過密都市の中で食糧を求めざるを得なくなり、食糧をめぐる暴動が社会不安を招き、さらに母親の栄養不良が新生児の健康を損ねる事態につながります。世界銀行グループの推定によると、食品およびエネルギー価格の急騰のため33カ国が社会不安の危機に直面しています。こうした国では食費が消費の半分から4分の3を占めており、ギリギリの状態なのです。
(「現下の世界経済運営における政治的課題」より)

食糧価格の高騰は、ここで言われているように社会不安を引き起こします。自給的な生産活動を行っている農村部では影響は少なく、大きな影響を受けるのは都市部の貧困層です。

ハイチ等での暴動が報道されていますが、都市部で社会不安が高じると政権の崩壊にもつながります。政情不安はさらに経済に悪影響を与え、途上国の困窮度合を深めることから、人道的にもそして政治的・経済的にも食糧価格の高騰には適切な対応が必要です。

適切な対応の具体的内容についてはぜーリック総裁のスピーチの中に示されていますが(*)、貧困層の購買力の向上(食糧を配給するよりもキャッシュを補助した方が効果が上がる)、長期的な農業生産力の向上(技術面での改良、インフラの整備、制度の整備)、農業をめぐる保護貿易の縮小などが必要です。

(*)新聞報道などでも報じられていますが、どうしても断片的になるのでスピーチ本体を読むことが重要です。これはこの件に限らずあてはまることだと思います。なかなか実践するには時間がないですが。

食糧不足は食糧の供給不足が原因で生じることは事実ですが、それが必ずしも飢饉につながるわけではありません。1980年代、アフリカではエチオピアで干ばつによる被害で飢饉が発生しましたが、一人当たり食糧生産量で対してかわらない国はほかにいくらでもありました。

たとえばインドでは、独立後飢饉は1回も発生していません。これは「緑の革命」が起きたことが大きかったのも事実ですが、それ以上にインドでは民主主義とマスコミが機能し、ある地域で食糧不足や飢饉の兆候が起きると貧困層への現金供給などの形で有効需要を作り出し、その地域にほかの地域から食料が流通するよう対応をとってきたからだと言われています。

今回は世界規模での課題となり、そのレベルで民主主義が機能するかが問われています。世界政府はありませんのでサミットにその役割を期待することになりますが、いかに課題に果断に取り組んでいくか、議長国日本の役割は大変重要です。

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