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2008年5月31日 (土)

アフリカ向け40億ドルの支援は巨額か

TICAD(東京アフリカ開発会議)が終了しましたが、昨日の朝日新聞に「支援策に厳しい目 NGO「債務増懸念」」と題した記事がありました。

今回の会議を機に日本のNGOが結成した「TICADIV・NGOネットワーク」は、福田首相が表明したインフラ整備を中心に5年間で最大40億ドル(約4200億円)の円借款を供与するとの方針に対して見解を発表。

「アフリカ諸国に巨額な借款を行い、再び大きな債務を生じさせることが適切かどうか、強い疑問を感じざるを得ない」と疑念を示した。
(5月30日付朝日新聞朝刊。TICADIV・NGOネットワークの声明文はこちら)。

「巨額」とか「大きい」という場合、「何に比べて」が重要です。

40億ドルは、一個人からすれば巨額ですが、アフリカ全体で考えるとどうなるでしょうか。

IMFのWorld Economic Outlookによれば、2008年のアフリカ全体での対外債務は、2623億ドルです。今後5年間で供与されるという40億ドルは、わずか1.5%に過ぎません

アフリカの対外債務2623億ドルが大きいか小さいかは、GDP比ではかることができます。債務/GDP比は2008年で20.5%開発途上地域全体のこの値は、25.1%で必ずしもアフリカ地域の債務負担が大きいわけではありません。これは近年の債務削減の貢献が大きく、2002年には60.5%もありました。

もちろん、債務削減によって数値が改善したのであって、この5年間でアフリカの経済構造が大きくかわったわけではありません。したがって、数値がよくなったからと言って、また借款を供与すれば債務危機がまた起きるのではないか、という懸念は当然あります。

そのためにはより厳格な対外債務管理真に生産的な投資への供与供与する借款の条件改善が必要です。

借款の供与条件については、近年、大幅に改善されています。こちらのページで確認できますが、LDCかつ貧困国(サハラ以南アフリカの多くがこのカテゴリに入ります)への借款は、金利0.01%という、ほとんど利子なしの条件で供与されます。償還期間は40年、うち最初の10年間は元本の返済は免除されます。

再び債務問題が発生するということは、この条件でも返済できないということになりますが、10年後、無利子でも返済できない状況に陥っているということは、債務問題という以前に、サハラ以南アフリカの経済が今後もゼロもしくはマイナス成長であり続ける、という大変な状況に陥っているということになります。

ちなみに「大きい」「小さい」に話を戻しますと、5年間で4200億円ということは年間にならすと840億円。2007年のインド一国への円借款の供与額は2251億円で、この2.6倍。アフリカ全体でもインド向け借款の額に及びません。

また、日本の公共事業と比べると、財務省HPのたまたま見つけやすいところにあった「平成20年度予算のポイント」をみると、スーパー中核港湾の整備(601億円)と空港等機能高質化事業(204億円)で約800億円。日本国内では、単年度でいくつかの港と空港を整備するのに使うお金にすぎません。

こう比較してみると、アフリカ全体で5年間4200億円というのは、はたして「強い疑問を感じる」ほどの「巨額」と言えるのかどうか、私は疑問です。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

らんにんぐ・ぱーとなーさん、こんにちは。
L25の記事を教えていただきありがとうございます。女性用というのもあるのですね…。知りませんでした。

貸付の場合、返済された資金が還流してくるので、その再利用が可能なことがメリット、というのはよく言われますよね。

日本の場合、円借款の多くはアジア諸国に出されたわけですが、それらの国々が順調に経済成長を遂げ、返済もしているとすれば、還流した資金を他の地域に振り向けるというのは悪くない話だと思います。

投稿: participant | 2008年6月 5日 (木) 01時11分

R25(男性用)だけじゃなくて、L25(女性用)にも同じような主張記事が掲載されていましたよ。ネットで調べてみたら、5/15の「日本のODAが世界第5位に なぜ援助額を減らしてるの?」という記事(http://l25.jp/index.php/m/WB/a/WB001120/id/200805151108/ccd/012/rfg/1)でした。
我が国の財政状況も厳しいところですが、ODAの中でも借款は財政に影響しないんですよね。以前の借款が返済されたりするから。そういうことも聞いたことがあります。

投稿: らんにんぐ・ぱーとなー | 2008年6月 3日 (火) 22時00分

ウィリー・ブーンさん、こんにちは。毎日新聞とR25の記事を教えていただきありがとうございます。
毎日新聞の記事は読んでいましたが、R25については電車内の吊革広告で開発援助特集が載っているのは知っていたのですが、そういう時に限って配布している場所を見つけることができず、逃していたので、教えていただいてよかったです。
無料誌、パリでは地下鉄の改札口なんかでよく配られていましたが、無料誌でも図説入りのアフリカの開発問題が頻繁に取り上げられていて、さすが欧州ではアフリカの問題は関心が高いな、と思っていましたが、日本でもそれに負けていないぐらい最近はメディアカバレッジが多くなっており、こうした動きには力づけられるものがあります。

投稿: participant | 2008年6月 2日 (月) 23時47分

私も関連のマスコミ情報を少し拾ってみました。
毎日新聞社説では、「TICAD閉幕「アフリカ型開発」を見たいhttp://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20080602k0000m070114000c.html」として、「自立、自助に基づいた経済発展を支援する観点から、無償資金協力や技術協力と合わせて、返済を伴う援助である円借款の効果的な活用を図っていくべきだ。」と主張しています。
やはり今回のTICADでの日本政府の対応は中々良い線行っているということかもしれませんね。
あとはどう「実施」が伴うかでしょうか。
ちょっと前のR25の記事「でも、財政赤字なのにどうしてODAするの?http://r25.jp/magazine/ranking_review/10001000/1112008051502.html」では、「00年まではアフリカの7カ国で最大の援助国だった日本。だが、04年は0カ国。世界的な価格高騰が進む金属資源を豊富に持つアフリカ。世界が支援の目を向けているのはいうまでもない。たしかに財政再建のために予算削減も重要。だが、ODAがその削減の真っ先に来るべきものなのかどうか。よく考えてみる必要がある。」とされています。
洞爺湖サミットなどにむけた今後の日本政府の対応も注目ですね。

投稿: ウィリー・ブーン | 2008年6月 2日 (月) 01時47分

BANBENさん、コメント頂きありがとうございます。
ボノの発言には毎回注目が集まりますが、今回は、いいこと言っているなあ、と感心することが多かったです。ついでにボブ・ゲルドフも。

》「90年代にはNGOは日本をちょっと見下した態度を取っていた」、「実際は日本の援助は我々よりもうまく機能していた」、「日本のインフラ援助はセクシー」

理解してくれたのはうれしいのですが、当時どれだけ苦労したことか…。

当時は保健医療や基礎教育とインフラ整備支援が対立項のように語られていましたが、人々が持続的な経済社会活動を営む上では両方とも必要ということがようやく理解されてきたということでしょうか。その資金源は事業の性格によって多様であっていいわけで、「債務は悪」、「ハコモノ援助は悪」といった決め付けに惑わされず、実務的に対応していくことが大事なのでしょうね。

今後もよろしくお願いいたします。

投稿: participant | 2008年6月 1日 (日) 15時24分

なるほど。一概に批判対象となるような巨額な債務にはならないかもしれない、ということですね。

私には難しい議論ですが、関連しそうなちょっと気になった有識者の見方を見つけました。

①U2ボーカリストのボノ氏
ボノ氏は、10年も前のケルンサミット前後で、「借款支援の債務がアフリカなどの途上国の過剰な債務となって成長を阻害している」といったことから債務帳消しを主張していた人ですが、朝日新聞での対談(http://www.asahi.com/international/africa/tokusetu/TKY200805310213.html)を見ると、「90年代にはNGOは日本をちょっと見下した態度を取っていた」、「実際は日本の援助は我々よりもうまく機能していた」、「日本のインフラ援助はセクシー」、「私はもっと日本から聞く耳を持つべきだ、東南アジアでの成功があるんだから、と言い始めた」と言うようになっています。

②産経新聞編集委員・田村秀男氏
「ODA増額論議、戦略思考欠如」という記事(http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200805230051a.nwc)で、「英米の慈善思想に追随する必要はない。日本は胸を張って、借款援助の仕組みを世界に広めることができる。」と言っています。

これらを見れば、いわゆる日本型支援といわれる、「円借款という返済を課す支援方式を主流にし、資金の有効活用の姿勢を強化させて、将来の返済も睨みつつ、産業育成・投資誘致といった成長志向のために必要なインフラ整備を支援の重点とする」ことはそれなりに理に適っている、ということでしょうか。

ご指摘の通り、巨額で過重な債務負担でもない、ということになれば、それなりに立派な支援策ということなのかもしれませんね。

投稿: BANBEN | 2008年6月 1日 (日) 00時16分

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