金融恐慌が深刻化してきましたが、今年上半期に話題になっていた「暴走する資本主義」(ロバート・B・ライシュ著、雨宮寛/今井章子訳、東洋経済新報社、2,000円+税)を読みました。
本書の主張は、以下のとおりです。
1960年代まではアメリカの企業は雇用を守るとともに地域社会に貢献し、特に大企業は自らが公的な役割を担っているという自負をもっており、一方市民社会も地域団体や在郷軍人会といった組織が中央政府への発言権をもっていました。
それが1970年代以降、物流や情報通信技術の革新によって経済がグローバル化するとともに、企業は資本家から投資を受け、より多くの顧客を得るための熾烈な競争にさらされることになります。
その結果、株価は上昇し商品の価格は下落することによって、投資家と消費者の利益は拡大しましたが、その代償として雇用は不安定化しました。
さらに本書では、企業間競争が熾烈になり、各企業が自らに有利な規制や政策を実現するために、ワシントンでロビー活動を繰り広げる結果、議会は企業の意向を受けた議論ばかりになり、市民団体の意見や公益を踏まえた議論がおざなりになり、資本主義が民主主義の基盤を毀損している、と主張しています。
タイトルからは理論的な難しそうな内容のような印象を受けますが、具体例を交えてわかりやすく書いてあり、また、実際にわれわれが日常接している現象(まわりが急に投資信託を買い始めた、ものはどんどん安くなっていき競争が激しくなっていく、他方において株価があがって経済成長率が上向いても労働者の立場として豊かになった実感はない…)と合致しているので、すんなり理解できます。
さて、今回の金融恐慌で多くの投資家は大きな損失を出し、投機マネーも行き場を失ってしまったようですが、ライシュが描いたSupercapitalismは今後どのようになるのでしょうか。
米議会での金融安定化法案の審議は時間がかかり、多くの議員が「マネーゲームに興じていた投資銀行への救済策は国民の理解を得られない」と可決に慎重になっていましたが、そのニュースを聞いた時は「投資家べったりではなく、まだまだ市民の声が届くじゃないか」と思ったのですが、時間がかかったのは別の理由があったようで、日経ビジネスオンラインの記事によれば・・・、
「政治家が法案を都合よく使っていないか」。法案通過後、そんな疑念がわき上がっている。当初案の3ページから議論と修正を重ね、成立した時には451ページに膨れ上がった法案には、およそ金融危機とは関係の薄いものが並んでいた。
ハリウッド映画に約4億8000万ドル(約490億円)、被災者救済に約88億ドル(約9000億円)、代替エネルギー開発に169億ドル(約1兆7200億円)…。総額1000億ドル(約10兆2000億円)を超える経済対策が盛り込まれていたのだ。
(日経ビジネス 揺らぐオバマの経済政策)
こうした記事を読むと、選挙民の目を機にはしつつも、普段ロビー活動を受けている企業への支援をさりげなく盛り込ませているのかという印象を受けます。
ところで著者のライシュ氏は、クリントン政権時の労働長官。別に意識して手にとっているわけではないですが、私が読むアメリカ関連本は民主党よりのものばかり。私がアメリカに生まれていればきっと民主党支持者だったにちがいありません。
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