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2008年10月22日 (水)

格差と希望

Kakusatokibou 「格差と希望 誰が損をしているか?」(大竹文雄著、筑摩書房、1800円+税)を読みました。

過去の経済誌・紙上の経済コラムをまとめたものですので、ハードカバーではありますが、大変読みやすくなっています。

この本のなかで大竹先生は、「格差解消に既得権者ができること」(P.125)というコラムで、コストを圧縮する際に、正社員の賃金を減らして新規採用することもできたのに、賃金を減らすことを嫌う正社員一人一人の気持ちが新規採用を控え、就職氷河期を生み、若年層の格差拡大の原因となっている」と指摘しています。

その上で、

新規学卒者は景気拡大の恩恵を受けても、既卒者は取り残される。既卒者のフリーターが再挑戦可能な社会にすることが、永続的な格差拡大を防ぐことになる。ただし、再挑戦を可能にするということは、既存正社員の既得権を奪うことでもある。それでも再挑戦可能な社会を目指すことが、若者の格差拡大を引き起こした既存正社員の、若者へのせめてもの償いではないだろうか。

と続けています。

さて、このコラムについて、いわゆる「マチベン」をやっている嫁に話したところ、思わぬ反論を受けました。

いわく、既存社員の基本給をカットするようなことを許せば労働者の賃金はどんどん低下していく、労働市場の流動化の名目で競争を進めれば正規雇用の数は減り、個人請負のような形態がどんどん増えていく、と。

彼女は、日ごろ雇用主から一方的に賃金カットを通告される労働者や、不安定な不正規雇用の人の相談を受けているため、労働者の権利を損なうような制度変更や規制緩和には懐疑的なのです。

よく、法律家は規範的な法律を作れば物事が解決すると考えるが、経済学的にはそれが全体の厚生を下げてしまうことがあり、法律家と経済学者は分かりあえない、と言いますが(グレーゾーン金利や借地借家法の議論はその典型)、それを地でいくような議論になってしまいました。

規制を緩和し、競争を強めれば個々の雇用者の地位は不安定化する、さりとて、競争がなく既得権を固定化してしまえば、今権利を有していない者はずっと不利な地位におかれてしまう。

結局、議論に結論は出なかったのですが、ただ、日ごろ厳しい状況におかれている労働者の相談を受けている嫁の言うことには強い説得力があり、それに対して長期的には個々人に教育投資をして生産性をあげ…という議論は、正直しづらいものがありました。

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