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2009年5月 1日 (金)

ソウルフルな経済学

「ソウルフルな経済学-格闘する最新経済学が1冊でわかる」(ダイアン・コイル著、室田泰弘・矢野裕子・伊藤恵子訳、インターシフト刊、2,300円)を読了。

経済学者でジャーナリストの著者が最新の経済学を紹介する本。といっても、カバーしている範囲は広く、また紹介する学説・学者も多いので、個々の学説や主張をわかりやすく丁寧に解説するというよりもパパッとユーモアを交えつつ展開していく印象で、その学説なり論文なりを知っていればよくわかりますが、そうでない分野は、「なんとなく」しかわからないという面はあります。

が、巻末にはきちんと参考文献が載っていますし、訳注も丁寧なので、これを入り口にして興味ある分野は深く勉強していくという感じでしょうか。

ところで本書の第3章は開発経済学をテーマにしており、ロダンやロストウから、サックスやイースタリー、バネルジーに到るまでの開発経済学や援助に対する考え方の系譜を俯瞰できます。

特に、最近の開発経済学の研究は、過去何十年も援助をしてきたのに経済成長が見られない国があるという点に着目し、「開発援助はどのようにしたら役に立つのか」という観点から行われている点が興味深いです。

日本では、主たる供与地域であった東・東南アジア地域が経済発展を遂げたことから、開発援助の有効性を疑問視する声は比較的少ないように思いますが、これらの国々は経済規模に占める援助の割合が少なく、対照的に援助が国家予算の3分の1を占めるような国々が多いアフリカでは、逆に経済発展が鈍いというのも事実です。援助が経済発展に重要であるならば、後者の方が発展してもよさそうなのに、そうでないのはなぜなのでしょう。

最新の研究では、仮に個別の援助プロジェクトが成功していたとしても、外貨の流入により被援助国の為替レートが上昇し、これによって被援助国の輸出競争力が弱められる傾向がある(いわゆるオランダ病)ことが示されています。

要約すると、悪い知らせは、援助が誠意をもって引き渡され、被援助国の政府によって注意深く使われた場合ですら、国際競争力への悪影響といった副作用があり、援助が成長にもたらす有益な効果を弱める可能性があるということだ。

援助による成長へのはっきりとしたプラスの効果が見当たらないのも、このためだろう。良い知らせは、マクロ経済の運営や援助の吸収能力といった問題に注意を払うことによって、援助が成功する可能性が高まるかもしれないということである。
(P.138 Rajan and Subramanianからの引用)

援助が役に立っているかどうかについて、我々はこれまで個々のプロジェクトの評価を行うことで判断してきましたが、どうもそれだけでは不十分なようです。

また、本書では、経済の内生的成長理論をひきつつ、援助は、「個々人の決定を調整し、誰でも投資できるよう適切な誘因(インセンティヴ)を与え、銀行制度の欠陥や貧しい人々が融資を受けられない、といった障害を克服するような政策」を支援することが重要であることを示唆しつつ、そのような制度枠組みは個々の国のコンテクストで異なるので、「政策実験」を通じて、どういう支援が機能するのかを見極めようとするバネルジーらの取り組みを紹介しています。

やはり、社会的実験に基づく貧困削減、というのは最先端のトレンドのようですね。

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