« やったあああ | トップページ | チャレンジ地方競馬 »

2009年7月17日 (金)

まっとうな経済学

Undercover_economist 「まっとうな経済学」(ティム・ハーフォード著、遠藤真美訳、ランダムハウス講談社、1,800円)を読みました。

数年前、本屋さんで手に取った時は、当時ティム・ハーフォードを知らなかったので「ヤバい経済学」のパチもん的なタイトルを嫌ってそのまま本棚に戻してしまったのですが、もっと早くに読んでおけば良かった、と思う1冊でした。かなり面白いです。

スターバックスはなぜ駅を降りてすぐのところにあるのか、という身近な話題から、その理由の背景には経済学が働いていることを説き起こし、最後の3章は、一国の経済発展にまでそのスコープを広げ、「経済学」を使うとどのようなことが見えてくるかを説きます。

経済学の本ですが、数式は一切なし。すらすら読めますが、読み終わる頃には、著者と同じように、自然に日常の出来事に裏に潜むロジックを探すようになっています。

さて、本書で印象深かったのは以下の2点。

ひとつは経済学は人を扱うものである、ということ。

これは第8章「なぜ貧しい国は貧しいのか」で端的に表れているように思います。この章では、カメルーンを主に取り上げて、一般に経済発展には道路、工場といった人造資源、教育などの人的資源、技術的なノウハウなどの技術資源が必要だと考えられているが、本当に重要なのは、「誘因」(インセンティヴ)とか「制度」、「信頼」であると述べます。

インセンティヴや信頼を人の心にどのようにもたらすか、がまさに重要で、これがなければどのような投資や援助も無駄になってしまうのですが、その方法論までは提示されていません。

開発援助というと、つい物的資本の供与や教育の提供をイメージし、実際そのような投入がなされるわけですが、どうやって制度や信頼を作り上げるか、難しい課題です。

もうひとつは、広範囲な経済発展こそが必要とする次の記述。

「フェアトレードコーヒー」や「無搾取衣料品」といった局所的な対応で、何百万という人々の生活が大幅に改善することは絶対にない。(略)おびただしい数のフェアトレードコーヒーのように、大きな弊害をもたらさずに少数のコーヒー生産者の所得が改善すると思われる例もあるが、それ絵はコーヒーの生産過剰という基本的な問題は解決できない。コーヒー栽培が魅力的な職業になりそうな気配をわずかにでも感じ取れば、そうする以外に生きるすべをもたない絶望的な境遇にある人々がなだれを打って押し寄せてくる。貧困国が広範囲にわたって発展しない限り、再貧民層の生活水準が向上することも、コーヒー価格が上昇することも、製靴工場の賃金と労働条件が改善することも決してない。

では、こうした広範囲な経済発展は可能なのか。本書では、これに続いて最終章で中国の経済発展を取り上げています。

フェアトレードそのものは批判されるべきものではありませんが、それが根本的な解決とはなりえないという点がクリアに説明されていて、印象的な一文でした。

|

« やったあああ | トップページ | チャレンジ地方競馬 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: まっとうな経済学:

« やったあああ | トップページ | チャレンジ地方競馬 »