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2010年3月24日 (水)

トルコのもう一つの顔

Turkeys_another_face ある地域について書かれたものは、その地域に関心のある人しか読まないので良書であっても広く読まれることがない、という難点があります。

この「トルコのもう一つの顔」(小島剛一著、中公新書、740円)も、非常に面白い内容で、トルコに関心のある人しか手に取らないのはもったいない、と思わせる本です。

著者は言語学者で、自転車でギリシアからトルコに入り、温かいトルコの人たちに迎えられながら、そこでトルコ国内にさまざまな少数言語があることに触れ、以来10数年にわたりトルコで野外調査を重ねます。

この本の前半は、トルコの地方部の人たちの生活振りや独特の言語、習俗などが旅の様子とともに綴られていて紀行文として面白いのですが、後半になると、そうした少数言語の存在を認めない(「少数言語ではなくて方言にすぎない」)トルコ政府が著者の研究に関心を持ち、トルコ政府から派遣された監視役付きでの調査になるなど、緊迫感のある内容になっていきます。

トルコにはクルド人以外にも様々な少数民族がいて、トルコ語とは系統の違う言語をトルコ政府のトルコ化政策にもかかわらず守り続けている、という本書の内容は大変興味深いものでした。

また、中には自分たちが喋っている言語が何語なのかわからない人たちもいたり、山がちな地形で個々の民族が分断されがち(固有の習俗・言語が守られやすい)な半面、東西の交易路として古来から様々な人たちが往来していた地域の歴史の多様さ・複雑さも新鮮です。また、そういう複雑な地域を統治するために、国民国家としての意識を植え付けようと少数言語の抑圧政策をとっているトルコ政府の「もう一つの顔」も知ることができて、大変有益です。

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コメント

たまさんと馬以外にもこんなところで接点があったとは…。

私は残念ながらトルコはアンカラとイスタンブール、それにゲレデぐらいしか行ったことがなく、東部の様子はオルハン・パムクの小説とこの本で読んだぐらいの知識しかないのですが、たまさんはバックパッカーとして旅行された経験があるのですね。

しかも様々な言語がパッチワーク的に部分的に共通しながら存在していることを実体験として知っておられるのであれば、きっとこの本は非常に面白く読めると思います。

もうバックパッカーという歳でもないのですが、たまさんのコメントを読んでまた行ってみたくなりました。

ちなみに私も皐月賞8着の頃からホワイトストーンが好きでした(笑

投稿: participant | 2010年4月29日 (木) 23時59分

こちらでも反応しておきます。
直行便のできる前のトルコに半年滞在し、ディヤルバクル等、外務省が危険勧告をしているクルド人居住地域にも脚を伸ばしたバックパッカーの経験があり、それ以来私は日本人にしては珍しく、明確にクルド独立支持だったりします。
彼らはの決め台詞は、「これはクルディッシュの~だ!」でしたし、私は彼らのクルド文化に強い誇りを持っていることを肌で感じましたね。
トルコ語はもうだいぶ忘れましたが、挨拶程度はこなせたので、日本にきてもいろいろ中東出身の方とは英語ベースで話しをしてきましたが、単語の端々等に中部アジア、アフガニスタンあたりまでの共通単語や、文字や意味的には同じだけれども、発音として異なる単語などがあること、そして、少し慣れてこれば意外とその手の言語が国が異なっても応用で会話できるくらい近いものを持っている部分もあって(となりの町のばあちゃんがそんな言葉を使ってるよ!とか。)、まちまちに分布してることまでは感覚的に知り得ることができました。
小島剛一氏は初めて知りましたが、10数年ほったらかした自分に対して、このテーマを真面目に研究されたことに頭が下がります。

投稿: たま | 2010年4月29日 (木) 22時47分

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