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2010年4月11日 (日)

「経済学」教育の重要性

最近、開発問題について多数の学生さんたちと話す機会があったのですが、その多くが途上国の問題解決に重要なのは「教育」であると考えているのが印象的でした。

確かに教育による人的資源の能力開発は重要です。しかし、実際には初等教育レベルでの就学率は大幅に改善している国が多く、また、中東地域のように高等教育まで終えても就職先がなく、若年層の失業率が社会問題化しているところもあります。

したがって、教育のみならず、民間セクターが活動しやすいようなマクロ経済環境、アカウンタビリティの高い政治などが必要になりますが、それを指摘をする学生さんはあまりいませんでした。

むしろ、彼(女)らが「教育」と言う場合には、啓蒙する必要がある、という意味で使っているケースが多いように思いました。ドロップアウトしてしまう子供たちが多い問題については、「親の意識改革が必要」という指摘が多く、教育を受けることについての経済的なインセンティヴの側面から論じる人はごく少数でした。

また、環境問題については、「国や企業のエゴが問題なので規制を強化すべき」という指摘をする人も多く、排出権取引や炭素税のように環境問題を減じさせるような誘因を与える方策について述べる人もほとんどいません。

規制の強化が必ずしも間違っているわけではありませんが、せっかく大学で経済学を学んでいるのであれば、インセンティヴを軸とした経済制度について語る人がいてもいいのではないかと思います。むしろ、「規制」や「意識改革」など、coercive な対策を可とする意見が多いのは、我々日本人は市場経済社会に生きているのに不思議な印象を受けました。

Market_mechanism_and_equity そういうときに、大竹文雄先生の「競争と公平感 市場経済の本当のメリット」(中公新書、780円、税別)を読みました。

前著、「経済学的思考のセンス」同様、様々なトピックをとりあげつつ、経済学の有用性をわかりやすく解説してくれる、新書かくあるべしという内容です。

さて、本書では、冒頭で日本では市場に対する信頼が低い、という調査結果が示されます。

「貧富の格差が生じるとしても、自由な市場経済で多くの人々はより良くなる」という考え方にあなたは賛成するだろうか。アメリカの調査機関であるピュー研究所は、2007年のピュー・グローバル意識調査で、世界各国でこの質問を行っている。(中略)

この図からわかるように、主要国のなかで日本の市場経済への信頼は最も低く、49%のひとしかこの考え方に賛成していない。これに対してアメリカでは70%の人が賛成している。(中略)

つまり大陸ヨーロッパ諸国とロシアは比較的市場に対する信頼が低い国だ。しかし、日本はその大陸ヨーロッパ諸国や旧社会主義国である中国やロシアよりも市場のメリットを信頼しない国なのである。

そのあと、P.71では、日本では学校で市場のメリットについて教えていない、という興味深い指摘があります。

市場競争のメリットを学ぶのは、家庭や学校である。しかし、日本では子供が市場競争を実感することはなかなか難しい。そこで重要になるのが、学校での教育である。経済の仕組みを教えるのは、学校教育では社会科である。中学校や高校の社会科の教科書を読むと、市場経済の仕組みは書いてあるが、市場経済のメリットはほとんど書かれていない。

確かに、私自身の記憶を呼び起こしても、市場経済のメリットについて、中学、高校で学んだ記憶はありません。そもそも、公民の授業自体が日本史や世界史に比べて軽視されていたような気がします。

意識改革や規制強化は、それを強制される方の反発が予想され、適切な市場ルールを設定するほうが望ましいと思うのですが、大学生でもそういう考えをしない人が多いというのはやや心配です。中学、高校もそうですが、学部を問わず、一般教養での「経済学」を重視することが大事なのではないかと思います。

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