求められる人材と手当の水準(その2)
先般、事業仕分けをされた田嶋衆議院議員のつぶやきから。
それにしてもJICA職員の厚遇振りは想像以上。しかもそれで途上国支援がミッションだから、多くの国民が違和感覚える。ドッポウ一律にラスパイレス70くらいが民間の感覚じゃないか。
いくつか感想を。
1.業務の質も内容も異なる、すなわち必要とされる人材も異なる独立行政法人の給与について、「一律に」ラスパイレス70ぐらいとする感覚というのは…。
田嶋先生は、米国ペンシルバニア大学ウォートン校のMBAホルダーだそうですが、業務の内容にかかわらず給与水準は一律にするって、それって経営学の教えるところなのでしょうか。どちらかというと統制経済、共産主義の匂いがしますが。
2.「途上国支援がミッションだから」厚遇が違和感がある、ということは、途上国支援をしている組織は、より給与が低くなければならないということですよね。
では田嶋先生も働かれていた、「The World Free from Poverty」を掲げる世界銀行グループの待遇はどうなのでしょうか。いろんな職種があるので一概には言えないでしょうが、部長級、課長級の待遇は相当に手厚いと聞いています。出張時に宿泊するホテルも安全対策を理由に常に超一流ですし。
先生のつぶやきの論理的帰結としては、世銀も途上国支援がミッションですから、給与は低くあるべき(?)で、民主党としては理事会を通じて世銀職員の給与を日本の国家公務員以下に下げろと主張されるおつもりでしょうか。
JICAでは転職者が相次いでおり、そのかなりの部分が国際機関への転職と聞いています。転職の理由は待遇だけではないでしょうが、ラスパイレス70の適用が現実のものとなれば、JICAから世銀やアジア開発銀行への人材流出の流れはさらに強まると予想されます。
国際機関職員に日本人が増えるのはよいことですが、そのかわりに日本の行政組織が弱体化するのは困ったことです。まして、開発援助の世界は、伝統的ドナーのみならず中国などの新興国ドナーとの競争も激しくなっているのですから、その足腰が弱まっては外交にも支障をきたすでしょうし、民主党が政策インデックスに掲げている2015年までのMDGs達成への貢献も弱まるでしょう。
無駄は削減すべきですし、組織の効率的な運営を促進する圧力をかける点で事業仕分けは有効な手段だと思いますが、「国民感覚として違和感がある」という感情論ではなく、組織を最小のコストで最大の成果が出せるような、経営的視点での変革を促すことが必要です。でないと単に「安かろう悪かろう」になり、国家のかじ取りを誤ることにもなりかねません。
独立行政法人といえども、民間では供給できない公共財を国民に提供しているのですから、コスト削減とともに提供されるサービスの質を低下させない工夫も同時に考えていただきたいものです。
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コメント
bangkokさん
≫本当に日本人の能力不足、至らなさ、限界を感じるこのごろです。
という点、ものすごく数多くの役人がどうでもいい仕事を作っている、というのは江戸時代の頃からの伝統だそうなので、一朝一夕には治らないのかもしれませんね。
二重行政やなんのために必要なのかわからなくなってしまった規則やら、改善点が多いのは事実なので、おっしゃるとおり、丁寧にしっかりとやる必要がありそうですね。
投稿: participant | 2010年6月20日 (日) 14時15分
同意です。ただあえて言うなら、「仕事をしていないのに高い給料をもらっている」公務員や独法職員が少なからずいるので、どうせやるならもっと時間をかけていいので緻密にやって欲しいと思います。
他方、与党が叩き官僚が防御するという構図では限界があるので、官僚に自ら膿を出させるメカニズムを構築するとともに、これだけでは殆ど出さないので、ある一定期間後に評価して出すべきだったのに出さなかった膿が見つかったとしたら、過去に遡って誤った対応をした官僚を退職後であっても処罰するようにできないもんでしょうかね。結局は、責任をとらなくて良い現行の官僚制度メカニズムを壊さなければならないと言うことでしょうが。
本当に日本人の能力不足、至らなさ、限界を感じるこのごろです。
投稿: bangkok | 2010年6月 6日 (日) 14時49分
O2さん、こんにちは。
事業仕分けでは、ODAの重要性に疑問を呈するような議論自体はなかったものの、確かにそういう気持ちにもなりますよね。
社宅の入居率が低いので、それを見直すという議論は無駄見直しの観点からありだと思います。ただ手当の水準は(繰り返しになりますが)必要とされる人材と労働市場との兼ね合いがありますから、「国民感情」を持ち出してそれだけで判断することはできません。
行政を効率化させることは重要ですが、人気とりのための「公務員叩き」には反対です。
日本にいると忘れがちですが、開発途上国を見れば質の低い公的部門・公務員がどれだけ国全体の経済社会の健全な発展を阻害しているかは明らかです。
政治家が公務員(含.みなし公務員)というスケープゴートを作り出し、それが高じて公共部門で働いている人がディスカレッジされ、人材流出が加速し、結果的に質が低下することのインプリケーションについて、国の在り方に責任を有する国会議員であればきちんと考える義務があると思います。
投稿: participant | 2010年5月 4日 (火) 12時24分
全く仰る通りだと思います。
政権が変わっても、ODAが日本の外交の重要な
ツールであることに変わりはないと思うのですが、
事業仕分けでの議論を聞いていると
そう思っているのはもしかして私だけ?と
自信を失います(´・ω・`)ショボーン
投稿: O2 | 2010年5月 4日 (火) 01時23分