ボトムビリオン
「最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?」(ポール・コリアー著、中谷和男訳、日経BP社、2310円)を読みました。
この本が取り上げているのは、開発途上国の中でも内陸国で紛争やクーデターが頻発し、経済のグローバル化の恩恵を得られていない国々です。ほとんどはサブサハラアフリカですが、中央アジアの国々もここに含まれます。
これらの国々は紛争や、劣悪なガバナンス、内陸国であるがゆえに周辺国の経済状況・インフラに左右される、天然資源が豊富にある場合には、それゆえに自国通貨の為替レートが高くなるため輸出産業が育たない(いわゆる「オランダ病」)、といった「罠」にはまっている、というのが本書の前半。
本書の後半は、それぞれの罠から抜け出すためには国際社会は何をなすべきかを述べています。提言は、いずれもアカデミックな分析に基づいて導かれており、主張に説得力をもたせています。
開発援助については、やみくもな資金援助はオランダ病の弊害をもたらしたり、被援助国の改革努力をくじいてしまうので、投入のタイミングとスキームの組み合わせが重要であること、また、改革を軌道に乗せるためには10年単位での長期の継続的な支援が必要であること、などが述べられています。
また、開発の問題はなにかとODAで解決されようとする傾向にありますが、筆者はODAだけではだめで、紛争を予防する軍事的介入、石油やダイヤモンドをめぐる汚職などのガバナンスの低下を防ぐ国際憲章の設定(「紛争ダイヤモンド」を市場から締め出すキンバリー・プロセスがその一例)、途上国に有利な貿易政策、とくに農産物の関税障壁の撤廃などが組み合されなければならない、と主張します。
日本の開発途上国とのかかわりはアジアに偏っており、つい「アジアの経験をアフリカにも」となどと言ってしまうのですが、この本を読むと、サブサハラアフリカの国がおかれている状況は順調に成長している東南アジアや南アジア、中国といった国々とは相当違うことがわかります。
イギリスや北欧の援助関係者と話すときに、話がかみあわなったりすることがありますが、それは、それぞれが念頭においている国や地域が違うからです。この本を読んでいるときに、彼らはこういうことがいいたかったのかとすとんと腑に落ちた個所がいくつもありました。
そういうわけで極めて有用な本です。関心のある人はぜひ読むべきですし、関心がなくても、大変わかりやすく書いてありますので、読むことをお勧めします。
うれしいことに近所の本屋さんでも平積みされていますが、こういう本が売れるようになると日本はそうとうイケている国になると思います。
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今月、TICAD IVが開催されるとあって新聞もテレビもアフリカ関連の番組・記事を多数紹介しています。
